お客様に常に最新の技術・デバイスをいち早くお届けする
業務改革リーダー
CPO (Chief Product Officer)
ジェラルド フィゴルス
CTO (Chief Technology Officer)
野口 英男
製品チームでは、最新の技術・デバイスをいち早くお客様にお届けすることで「タイムベース競争」を具現化しています。2019年のi-PRO独立から5年間で、ネットワークカメラの年間新製品数を13から100に爆発的に増加させることができました。むろん、これを実現するために様々な変革を進めてきました。
■新製品数増加を支えるモジュラー設計
以前は製品ごとに企画・開発を行っていたため、製品を構成するハードウェアやソフトウェアも部分最適の「個別設計」でした。一方、「モジュラー設計」は、部品(モジュール)をハードウェア、ソフトウェアともに多くの製品に展開することを前提としており、共用化できる最大構成の部品として「モジュール規格」を策定します。製品ロードマップを定め、最適なモジュール規格を策定し部品化を進め、そのモジュールの組み合わせで一気に製品ロードマップを実現するというものです。一般的にはモジュール化により、製品のサイズが大きくなったり、材料コストが上がったりといった副作用が発生するのですが、モジュール自体の小型化や部品の共用化による材料費低減などの対策を講じています。同時に、製品全体における小型化や製造コストを含めた全体最適のコスト低減を図ることで、結果としてモジュール化以前よりも製品の小型化やコスト低減を実現しています。また、爆発的に製品数を増やしたにもかかわらず、SKU(Stock Keeping Unit)*1は増えるどころかむしろ減っています。モジュラー設計による効果も大きいのですが、その他の部品の共用化・標準化にも大きく貢献しています。
*1 SKU(Stock Keeping Unit)とは、在庫管理上の最小の品目数を数える単位
■新製品開発期間の大幅短縮
製品に先駆けてモジュールを先行的に規格化、開発するチームを組織化することで、製品開発期間を大幅に短縮しています。従来2年程度かかっていた新製品の開発期間は、半分の約1年になりました。特に、主要デバイス(ネットワークカメラの場合は、イメージセンサーやシステムオンチップ)のアップデートの際には大きな効果を発揮します。イメージセンサーやシステムオンチップは日々進化を遂げており、最新のデバイスを使うことで製品として最高の性能や機能を実現できます。そのため、なるべく早いタイミングで最新のデバイスを搭載した製品をお客様に届けることが大きな価値となります。当社ではデバイスメーカーと密に連携し、最新のデバイスの情報を入手しています。そして専門の開発チームが最新デバイスを搭載したモジュールの開発を最速で進めています。
■モジュラー設計の付加価値―高品質の確保
品質においても良い効果が出ています。製品数が大幅に増加したことにより品質問題もある程度増加することを想定していましたが、むしろ約半減しています。製品のコアとなるモジュールの設計に注力することでハードウェア・ソフトウェアともに設計品質が向上し、その高い品質のモジュールが多くの製品に展開されている結果だと分析しています。このように、モジュラー設計は当社のタイムベース競争の基盤になっています。今後は、ネットワークカメラのみならず、医療用カメラなど当社の他の製品にもモジュラー設計を展開していきます。
■オープンポリシーとパートナー協業
ネットワークカメラは単体で使用されることが少なく、カメラの映像を記録・管理するレコーダーやVMS(Video Management System)、VSaaS(Video Software as a Service)など、これらシステムやサービスを提供しているメーカーと連携してエンドユーザーに価値を提供しています。i-PROのネットワークカメラをより簡単にシステム機器に接続してもらえるように、またカメラの機能や性能を十分に引き出してもらえるように、多くのテクノロジーパートナーと連携するオープンな活動を積極的に行っています。
i-PROは、カメラのAI機能をオープンにして、テクニカルパートナーに活用していただく仕組みも提供しています。カメラ上で動作するアプリケーションを開発するためのSDK(Software Development Kit)を提供するとともに、スムーズに開発を進めていただけるようにサンプルアプリやチュートリアル、オンラインでのテクニカルサポートを提供しています。
昨今、サイバーセキュリティやAIの倫理的使用については、エンドユーザーだけでなくパートナーにとっても大きな関心事になっています。安心してi-PROのカメラをご使用いただくために、すなわちi-PROのオープンポリシーの基盤としてサイバーセキュリティ対策及びAI倫理的活用を最重要事項として取り組んでいます。
■変革を支えるデジタルプラットフォーム
これらの変革は、旧来のやり方では実現できませんでしたが、デジタルプラットフォームとそのデータを最大限活用する事により実現することができました。商品企画部門では、まず商品のスペック情報や開発日程・発売日程情報を従来のExcel管理からデータベースでの統合管理に移行し、PowerBI*2による可視化も開始しました。それにより複数の関連部門がいつでも必要な最新情報を入手することができ、爆発的に増加する製品の企画・開発業務を効率的に推進できる仕組みを整えました。それらの情報は最前線の営業チームにも共有され、新商品の市場導入がよりスムーズになるなどの効果も出ています。また、商品の形状、解像度等のスペック、発売時期や販売先など、数十の切り口で販売データを分析するダッシュボードを作成し、目的に応じた切り口でデータ分析ができるようにしたことで、幅広いラインナップの商品群の販売状況を的確に分析して、次の商品企画やパートナー企業の皆様との活動計画に生かしています。このように、私達の変革は、まさにデジタルプラットフォームに支えられています。
*2 PowerBIはMicrosoft社が提供しているBI(ビジネスインテリジェンス)ツール